速報の羅針盤.

政治・社会・テクノロジーから文化まで、今世界で起きていることを鋭い視点で読み解く最新ニュースメディア。

ライフスタイル

男性の袴のたたみ方を完全解説|正しい手順とコツ

By Sarah Smith |

袴をきれいにたたんでしまう——それは、和装を大切に扱うための基本中の基本だ。しかし「何となく折りたたんで引き出しに押し込んでいる」という人は意外に多い。卒業式や成人式、あるいは剣道や弓道の稽古で袴を着た後、正しいたたみ方を知らないままにしていると、ひだが崩れ、次に着るときに見た目が一気に残念なことになる。

男性袴のたたみ方の手順を示す画像

この記事では、男性用袴のたたみ方を種類別に丁寧に解説する。どこで折るのか、ひだはどう扱うのか、そして保管時に気をつけるべきことまで、実際の手順に沿って順番に説明していく。着付けと同じくらい、「脱いだ後」の扱い方が袴の寿命を左右する。

男性の袴の種類をまず確認しよう

たたみ方を覚える前に、自分の袴がどのタイプかを知っておく必要がある。男性用の袴は大きく分けて二種類だ。

ひとつは「馬乗り袴(うまのりはかま)」。股の部分が分かれていて、ちょうどキュロットスカートのような構造になっている。武家装束に由来し、剣道や弓道、乗馬などの武道・武芸でよく使われる。生地はしっかりしていて、ひだも比較的深い。

もうひとつが「行灯袴(あんどんはかま)」。スカート状で股が分かれていない筒型の構造だ。現代では卒業式や成人式、七五三の付き添いなどフォーマルな場面でよく見かける。女性用の袴に近い形状だが、男性用は丈が短めに作られていることが多い。

この二種類はたたみ方がほぼ共通しているが、股下の処理だけ少し異なる。以下では主に馬乗り袴をベースに説明し、行灯袴の違いについても補足する。

たたむ前の下準備が仕上がりを決める

いきなりたたみ始める前に、まず袴の状態を整えることが重要だ。着用後の袴には、汗や湿気が含まれている。すぐに畳んでしまうと、その湿気がこもってカビや変色の原因になる。

着用後はまず、直射日光を避けた風通しのいい場所で、ハンガーに掛けるか衣桁(いこう)に広げて1〜2時間ほど陰干しする。生地が落ち着いてからたたむことで、余計なシワも防げる。

干し終わったら、たたむ場所を確保しよう。畳の上、またはカーペットやじゅうたんの上が理想的。フローリングだと滑りやすく、生地を傷める可能性もある。十分な広さのある平らな場所を用意することが、きれいな仕上がりの大前提だ。

男性袴のたたみ方:基本の手順

袴のひだを整えてたたむ基本の様子

ステップ1:袴を表向きに広げる

袴を前面(ひだのある面)を上にして、床の上に広げる。ひだが5本ある面が表だ。男性用の袴は前に5本、後ろに1本のひだがあるのが一般的。まずこのひだを手で丁寧に整え、左右均等に並んでいるか確認する。ひだが乱れたままたたんでしまうと、次に着るときに形が崩れてしまう。

ステップ2:腰板を折り返す

男性用の袴には、後ろ腰の部分に「腰板(こしいた)」と呼ばれる硬い板状のパーツがある。これが男袴の大きな特徴のひとつだ。袴を表向きにした状態で、この腰板を内側に折り返しておく。腰板の角が袴の生地を傷めないよう、丁寧に扱うこと。

ステップ3:ひだを重ねて整える

前面のひだを一本ずつ、元の折り目通りに整えながら重ねていく。袴のひだは縫い止められていない「活きひだ」なので、少し雑に扱うだけで崩れる。手のひら全体を使って、上から軽く押さえながら折り目を確認するのがコツだ。ひだが全部きれいに揃ったら、袴全体をまっすぐな長方形に近い形にする。

ステップ4:左右を中心に向かって折る

ひだを整えた袴を、左側を右側に向かって三分の一ほど折り返す。次に右側を左側に折り重ねる。これで袴の幅が三分の一程度になる。このとき、折り目がひだの位置とずれないように注意すること。ズレると後でひだがよれてしまう。

ステップ5:上下を二つ折りにする

左右を折りたたんだ後、袴の裾の方から腰の部分に向かって二つ折りにする。またはさらに三つ折りにしてもよい。着物の収納スペースに合わせて調整しよう。ただし、折る回数が多いほど折り目がつきやすくなるので、二つ折りで収まるサイズの収納袋や箪笥(たんす)を用意できるなら、二つ折りが望ましい。

ステップ6:帯紐を結んでまとめる

たたんだ袴は、そのままではバラバラになりやすい。袴の腰紐(こしひも)を使って、全体をまとめるように緩く結んでおくと安定する。きつく縛ると紐の跡がついてしまうので、あくまでも「まとまる程度」の加減で。

馬乗り袴と行灯袴のたたみ方の違い

行灯袴の場合、股の分かれ目がないため、前述のステップ1〜2の工程が少し単純になる。袴を広げた際に、筒状の内側部分が崩れないよう、軽く手を入れて整えてからひだを合わせるとよい。基本的なたたみ方の流れは馬乗り袴と同じだ。

馬乗り袴の場合は、股下の部分を最初に内側へ折り込んでおくと、その後の工程がスムーズになる。股のマチがあるぶん、行灯袴より厚みが出やすい点は覚えておきたい。

ひだをきれいに保つための実践的なコツ

袴のひだをきれいに保って保管する方法

ひだが美しく保たれた袴は、着用したときの品格がまるで違う。何年かに一度しか着ない袴だからこそ、次に取り出したときに「きれいだ」と思える状態を保ちたいものだ。

ポイントのひとつは、収納するときに上から重いものを載せないこと。袴は和箪笥や収納ケースの中でも、できれば上の段に置くか、他のものとは別にしてスペースを確保しよう。重さで折り目がよれたり、ひだが押しつぶされたりするのを防げる。

また、和紙や半紙を薄くひだの間に挟む方法もある。湿気を吸収しながら、折り目の形を保つ効果が期待できる。専門店やネットで購入できる「着物用たとう紙(たとうし)」に袴を入れて保管するのが、最もオーソドックスで確実な方法だ。たとう紙は通気性があり、袴を包んだ状態で箪笥に収納できる。

防虫剤も忘れずに。ただし、化学系の防虫剤は種類によって生地を変色させることがあるため、着物専用のものを使うこと。また、直接生地に触れないよう、袴の上の隅に置くのが基本だ。

シワがついてしまったときの対処法

久しぶりに袴を取り出したら、思っていたよりシワになっていた——そういうケースは少なくない。その場合、まず焦らないことが大切だ。

軽いシワであれば、袴をハンガーに吊るして湿気の少ない室内で数時間〜1日ほど陰干しするだけで、自然に伸びることが多い。繊維が落ち着いて、ひだが戻ってくることもある。

それでも気になるひだの乱れには、和装専用のスチームアイロンを使う方法がある。ただし、袴の素材(ウール、化繊、正絹など)によって適切な温度が異なる。ウールや化繊は比較的アイロンをかけやすいが、正絹(しょうけん)は非常にデリケートで、直接アイロンを当てると光沢が失われたり、生地が傷んだりする。必ず当て布をして、スチームを使い、低温〜中温で慎重に行うこと。

自信がない場合は、無理せず和装専門のクリーニング店に持ち込む方が安全だ。正絹の袴は特に、素人判断でのアイロンがけは避けた方がいい。

素材別の注意点まとめ

素材 特徴 アイロン 保管上の注意
正絹(シルク) 光沢があり最高級。摩擦・熱に弱い 当て布必須・低温 たとう紙に包んで湿気を避ける
ウール 保温性高め。シワになりにくい スチーム・中温 防虫剤を必ず使用
化繊(ポリエステル) 手入れしやすく丈夫。価格も手ごろ 低温・当て布推奨 静電気に注意

袴を長持ちさせるための保管環境

袴に限らず、和装全般に言えることだが、保管環境が生地の寿命を大きく左右する。湿気と虫が和装の二大天敵だ。

理想的な保管場所は、湿気が少なく、通気性があり、直射日光が当たらない場所。和箪笥の中が最適だが、持っていない場合は収納ケースに乾燥剤を入れて代用できる。季節の変わり目(特に梅雨明けと秋口)には、袴を取り出して虫干しする習慣をつけると、カビや虫食いのリスクが大幅に減る。

虫干しは、晴れた日の午前10時〜午後3時ごろ、風通しのいい室内で行うのが理想。直射日光は色褪せの原因になるため、カーテン越しの明るい場所が適している。袴をハンガーや衣桁に広げ、2〜3時間ほど陰干しすれば十分だ。

着付け師や和装のプロが実践する一工夫

着付けを仕事にしているプロたちは、袴をたたむ際にひと手間を加えることが多い。たたむ前に、袴全体を軽く手でなでて静電気を逃がすこと。これだけで生地のまとわりつきが減り、ひだが整いやすくなる。

また、たたみ終わった袴をそのまましまう前に、手のひらで全体を上から軽く押さえて折り目を安定させるひと押しも有効だ。意識するかしないかで、数ヶ月後の状態がかなり変わってくる。

袴のたたみ方は一度覚えてしまえば難しいものではない。大切なのは、手順を正確にこなすことよりも、「ひだを崩さない」「湿気をとる」「丁寧に扱う」という意識を持って向き合うことだ。袴はきちんと手入れすれば、何十年も美しい状態を保てる衣装だ。次に袖を通す日が楽しみになるような保管を、ぜひ習慣にしてほしい。